旨い蕎麦って
まずは・・・自称蕎麦通の方々でも小麦粉と蕎麦粉の特製を全く理解していない方の多いことに驚かされます
蕎麦粉だけで打った「生粉打ち(蕎麦粉100%)」蕎麦は小麦粉と違っていくら捏ねても、寝かせてもグルテンは生成されません
従って小麦粉で打たれている「うどん」とは当然食感は全く違ったものになります
所謂、蕎麦の「コシ」と言われるものとうどんの「コシ」は全く違います
私は「コシ」とは反発力だと思っています・・・「しなり腰」「柳腰」など
蕎麦粉にはそのような性質はありません
従って噛んだときに「キチッ」とした感じで切れ良く噛み切れる!・・・
その適度な感触の硬さがあえてうどん流に言うならば蕎麦の「コシ」と言うことになるでしょうか
「ムニュッ」とした反発を感じる蕎麦は小麦粉がかなり入っていることになります
当然、蕎麦は嗜好品ですからそのような「うどんぽい蕎麦が好き」という方も居られるでしょうがそのような方は私の基準としてはうどん好きであって蕎麦好きの範疇には入らないことになります
そして、一口に「旨い蕎麦」と言ってもどんな風に旨いのか・・・
勿論、好みは人それぞれなのですが蕎麦そのものだけをチョット考えても
「牡丹そば」や「キタワセ」「常陸秋そば」「丸岡在来」など数多く有る品種固有の味
その蕎麦の実を粉にするのに最も多い「ロール碾き」「電動石臼」「手碾き石臼」などの製粉方法
「一番粉」「二番粉」「三番粉」「四番粉」辺りまでのどの部分を蕎麦に使用して、またどのように組み合わせて蕎麦にするのか
打ち方による違いも有り、最も代表的な「二八」「生粉打ち」、「七三」「六四」「同割」などの蕎麦粉の割合と「太さ」「色」「固さ」
そして「つゆ」に使用する醤油、味醂、砂糖にも数多くの種類があり無数の組合せがあります
更には、蕎麦そのものだけでは無い、代表的な「天麩羅」「きつね」「たぬき」「おかめ」「鴨南蛮」などの多くの種物の種類も有ります
「旨い蕎麦を打とう」と思った時に上記のように組合せはあまりにも広汎・・・「旨い」ポイントを何処に置くのか
「天麩羅蕎麦」に代表されるように種物の総合的な組合せによる旨さも大きいのですが「蕎麦」「つゆ」「天麩羅」などの種によってがお互いに旨さを補完し有ってしまい「旨さ」のポイントがぼやけてしまいます
蕎麦が旨いのか、天麩羅が旨いのか、はたまたつゆが旨いのか・・・更には「あそこの海老はもっと大きかった」の「小さかったの」と
勿論、「全部旨くなければ」と仰る方や「複合的な相乗効果による旨さだ」と仰る方もおられるでしょう
その点、「蕎麦」そのものでしたらメインの蕎麦だけを食べて「旨い」のか「旨くない」のかが直ぐにハッキリします
従って私は最もシンプルでストレートな「蕎麦」そのものを追求することにしました
総合的な蕎麦の旨さを求められる一般の蕎麦好きの方々からは離れてしまいますがやむを得ません
「つゆ」も「薬味」も一切無しで蕎麦だけを食べて旨い蕎麦を・・・
次は品種の選択ですが、蕎麦は飽くまでも自然条件に左右される農産物、難しいのは特定の品種を指定して常に手に入るかが問題です
旨いといわれる蕎麦はそれぞれ色々と試して見ましたが確かにどれも評価通りに美味しい蕎麦に思いました
好みに合った品種の中で、安定的に生産されていて通年で安定供給される可能性の大きい「牡丹そば」と「キタワセ」を基本に組みたてることに決めました
蕎麦を打つ粉は甘さ、香り、食感など全体的な風味は粉の鮮度が物を言います
それに関して当然碾き経ての自家製粉の美味しさに勝つ方法は有りません
電動の石臼でもあるレベルまでは可能ですが・・・非常に手間は掛かかりますが何と言っても手碾きの石臼での自家製粉がBESTです
一般には「更科」が高級蕎麦と言われていますが飽くまでも普通の蕎麦の中の一部分です
中心部の澱粉質が多い部分ですから確かに見た目は白くて透明感があり上品ですが・・・
自家製粉のお店でも「更科」を特別な商品にしている場合もありますが、更科が本当に美味しくて特別に良い粉でしたらその一番旨い更科の部分を抜かれてしまった残りの粉で打たれた蕎麦は可愛そうですね (^_^;)
話しを戻して・・・卵にしかり、果実にしかり、私は蕎麦の実全体で一つの味と考えています
次の世代に伝える大事な情報と栄養素が全て凝縮されて未来に繋がる味です
全ての旨さと香りを蕎麦の中に閉じ込めたままにするために粉の碾き方は出来るだけ粗く・・・
その全てを蕎麦に打ち込みます・・・一切何も引かない、製粉する以外に全く手を加えない自然のままの全粒粉です
その全粒粉を生粉で打つのに打ち粉も全く同じ蕎麦粉をそのままに使用します
そして、とても酸化し易い蕎麦の食味に出来るだけ影響を与えないようにミネラル分の少ないアルカリ天然水以外には一切何も加えません
打ちあがるのは蕎麦の実そのままの味、純粋な蕎麦の実そのものの味です
噛締めるほどに甘さや香りが口中に広がります・・・
若干のエグミも有るかも知れません・・・それも自然の味です
如何にして蕎麦本来の旨みの全てを引き出すか、それだけを追求しています
旨い蕎麦は心にも、身体にも優しいホッとする自然な味なのです
余談ですが・・・
粗碾きの生粉打ち蕎麦は短いものと決めつけておられる方が居られます
これまでそのような粗碾きの生粉打ち蕎麦しか召し上がってこられなかったとは残念ですね (^_^;)
「粗碾の生粉は短くて当たり前」などと言うことはありません
それなりの若干の技術さえあれば20メッシュの超粗碾きでも生粉で、水だけで充分に長く繋がります
石碾屋の「抜」をご覧頂けば・・・「百聞は一見に如かず」